moNo’s note

最近読んだ本,観た映画など,気ままにメモします.

テクノロジーが 予測する未来 web3、メタバース、NFTで世界はこうなる/伊藤穰一(2022)

web3.0,Metaverse,NFTの概念的な動向と具体的事例を俯瞰で示してくれる一冊.非常に分かりやすい整理だった.

この本を読むと,日本語文献で見かけるweb3.0の話より,抽象度高めで俯瞰的な目線が理解できた気になる. これまで,動画サイトでweb3.0に関する動画を見ると,web3.0がVRの延長線上の話に思えることが多かった. しかし,この本を読むと,どうやら違うらしい,という感触がある. 少なくとも,もう少し壮大な見方があることが分かった.

また実用的な側面として,web3.0の現状は完全に安全安心ではないという警告や,新規参入向けのおすすめの一歩を記してくれている,初心者にも非常に優しい本だった.

印象的だった節の見出しと感想を記しておく.


web1.0は「読む」,web2.0は「書く」,web3.0は「参加する」

非常に分かりやすいが,本当だろうか? 例えば既存のオンラインでコミュニティを形成している人々がいる時点で,web2.0で既に「参加」が生じているように思う. ただ,web2.0プラットフォーマーが分断されている時代で,リンクを張ってプラットフォームの間を行き来はしていた. 例えば,「お財布」や「個人情報」を持ち歩けない状態. これが変わりそうなのがweb3.0,というのが正確な解釈に思える.

働き方は,勤め先に縛られなくなる

人の活動が国や組織に縛られず「生きる糧」と交換可能になるかどうか,と捉えると,分散的だった経済圏が,一つの大きなプラットフォーム(どこにいようと,仕事と生きる糧が交換できる)に支配されるようにも思える. 一方で,上意下達の「仕事」ではなく,目的ベースで活動できる点は,非常に面白そう. また,途上国であっても貢献できる(例えば,OSSを自国向けに翻訳する)などの事例があるなら,面白いかもしれない. ただ,「貢献」を常に考える海外式の雰囲気なので,少なくとも日本では馴染める人は限られるのではないか.

NFTが環境を破壊する?

非常に環境負荷が高いイメージだったが,計算負荷を下げようとする動きもあるらしい.知らなかった. ちゃんと調べたい.(例えば,Proof of Spaceとかかな?)

自分の「評判」をマネジメントする

web3.0的に活動すると,自分の仕事自体がオープンになって自身の評判に直結するから,そのマネジメントが重要だよねという話. ただ,SNSと同様,偽名アカウントや,複数アカウントの使い分けなどが可能であれば,必ずしも活動と「その人」の結びつきを保証することはできない. 「評判に使う」用途があるよ,ととらえておくのが適切だと思う.

>学ぶ動機が情熱を生むーweb3がもたらす「参加型教育」

これは非常に面白かった. 本文に出てくる事例では,既存の「学校」のような形式ではなく,「問題を解く」という目的ベースで集まった人々が小さなチームを作り,24時間オンラインで共に学べるという話だった. 学校のクラブや部活動に近いイメージだろうか. アクティブラーニングは教師(プロ)を必要とするが,必要としない形式が作れるかもしれない.

web3参入のファーストステップ

大きく3つ.ウォレット作成,暗号資産取引所の口座を作る,NFTを買ってみる. 早速,今日,やってみよう.


以前,DAOに興味が沸いて調べた時点では,blockchainの周りが重要で,そのルール作りや使い方次第なのかな,という感想だった. この本を読んだところ,分散主義的に組織が作れる点,立ち上げが手軽(10分!)でできる点がよいらしいということが分かった. また,個人主義的な,それぞれの技術世界の上で活動をopenにしていこう,という流れにも見える. SNSの先,能動的な投稿だけでなく,活動を飲み込む流れなのかもしれない.

一方で,web3.0の雰囲気として,コミュニティへの参加障壁が感じられる点は若干気にはなる. 手に職つけた人は動きやすいが,それがない場合は人脈や行動力がものをいいそう. 自分が所属しやすい空気感が見つけられるかが重要なのかもしれない.