moNo’s note

最近読んだ本,観た映画など,気ままにメモします.

NHK「100分de名著」ブックス 世阿弥 風姿花伝/土屋 惠一郎

世阿弥でも読んだら?という,某准教授の意図を探るために購入.

世阿弥は能の世界で沢山の作品を残した人物であり,風姿花伝は,世阿弥の書いた能楽論にあたる. 著者曰く,風姿花伝は現代のマーケティングやビジネスに通じると説いている. なぜなら,世阿弥の生きた室町時代が「人気で役者が決まるようになる」「パトロンが将軍に移りはじめる」時代であり, 世阿弥は,そのような世相で能を存続させる戦略を練り,具体的な教えを風姿花伝に記したから,としている.

本書の構成は,風姿花伝から主だった分を抜き出し解説してくれる. 心に残ったのは主に三つ.

  • 初心忘れるべからず 元々,世阿弥の言葉らしい.  原文は,若い頃の意だけでなく,「人生の時々」「老後」それぞれで「初心」に帰るべき時節がくると説いている. 人生の時々とは中年で脂ののった時期,老後とは体の衰えはじめを指すらしい.

  • お前は才能でXXXするのか これは著者が,風姿花伝は「才能はつくられるものだ」という信念のもとに書かれた,と考え, その延長で,著者が人から聞いた二つのエピソード「才能で小説を書くのか」,「君は手で絵を描くのか」を引き合いにしている. 著者は,小説にしろ絵にしろ,才能や技術の前に「何か」があるのではないか,と解釈している. 要するに,やるか,やらないかに尽きるということであろう.

  • めずらしきが花=面白い 「目新しさ」こそ市場に求められる要素,と解釈すれば「目新しさ」はない. 現代のように演じるだけでなく,他の芸を取り入れ,能の型を創り上げた世阿弥だからこそ,という話.

全体的に,筆者の解釈や考え,嗜好に寄っているように感じる. しかし,背景知識がない初心者としては,雰囲気を知れてよい本だった.