moNo’s note

最近読んだ本,観た映画など,気ままにメモします.

シャーロック・ホームズの凱旋/森見登美彦(2024.1)

著者の過去作を何作か読んでいたこともあり購入.

推理小説のオマージュ,京都とロンドンのブレンド,多重構造の世界観など,舞台設定が非常に練られていて面白かった. 私が著者に対して抱いているイメージは,非常に頭が良く,技巧的な小説を書く,ということ. 本作もそのイメージ通りで,それが私自身の好みであるのか,楽しめた.

印象的だったのは,オマージュの部分と(恐らく3重の)世界観. 前者は,例えば,自分探しの旅と称しグーたら過ごす名探偵. シャーロックホームズを読んだことのない私でも,このギャップは面白い. この面白さは,昨今の「現実」を描いた娯楽作品と同種のものであり,現実と理想のギャップと,それを面白おかしく描写するところから来ているようにも思う. 後者は,世界を三つ以上示唆することの面白さ. 世界が二つの場合,創造された世界から別の創造された世界へ行って帰ってくるだけで,現実との結びつきが想像しづらい. 仮に,現実と創造の二つを設定しても,現実側を創造された現実と解釈してしまう. これを三つ,つまり,二つの創造の外側を示唆すると,三つめを現実と結び付けたり,n重構造の可能性を考えたりと,妄想が広がる.

1年ぶりに日本語の小説を読んだが,楽しい時間だった.