moNo’s note

最近読んだ本,観た映画など,気ままにメモします.

シャーロック・ホームズの凱旋/森見登美彦(2024.1)

著者の過去作を何作か読んでいたこともあり購入. 推理小説のオマージュ,京都とロンドンのブレンド,多重構造の世界観など,舞台設定が非常に練られていて面白かった. 私が著者に対して抱いているイメージは,非常に頭が良く,技巧的な小説を書く,という…

中島らもの特選明るい悩み相談室 その3 ニッポンの未来篇/中島らも(2002)

某動画サイトで桂枝雀師匠との対談動画を見て購入. ただ,読了後,最も面白いのはその動画の話で,本を読んでもその時ほど面白いと思わなかった.何故か? 勿論,話のネタが古い,嘘くさい,と感じて,共感しずらいこともある. ただそれ以上に,「対話」自…

こんとあき/林明子(1989)

げっそりした帰りの電車内,某動画サイトでだれかが紹介していたのをきっかけに購入. 一読したとき,こんが親を,旅路を帰郷と解釈した. そのうえで,大丈夫と言い続けるこんの強さに,感じるものがあった. 同時に,身近な強い?大人を連想した. 一方,…

橋の上で/ 湯本香樹実,酒井駒子(2022)

大人向け絵本コーナーで目について購入. 橋の欄干で俯く少年の表紙に感じるものがあったら,是非一読してほしい. 疲れていても絵本は読みやすい. 個人的には,あの1ページのように綺麗ではないけど,近しいことが直近で頭を過ったことを思い出して,全く…

おくりものはナンニモナイ/Patrick McDonnell(2005)

大人向け絵本コーナーで目について購入. 誰かに何かを贈るとき,少し立ち止まるために,思い出したい一冊. これを贈るのもよいかもしれない. 面白いのは,決して綺麗な絵ではないのに,どこか可愛らしさがありつつ,メッセージは明確に伝わってくること.…

なんでも見つかる夜に、こころだけが見つからない/東畑開人(2022)

書店の心理学系の棚で発見.なんとなく目に留まって購入. 世界は単純だ,人間関係が全ての悩みだ,というアドラーに対し, 全ては二項対立でその両方が内在されてる,複雑なものなんだよ,と改めて気づかされた本. セラピーの実例を織り交ぜて物語形式にな…

タテ社会の人間関係/中根千枝(1967)

組織に属する人は,一読してみては?,というポップに惹かれて購入. 「日本人はXだから…」とよく聞く話が多くげんなりするが,よくよく思い返すと,気づかないうちにそのステレオタイプにはまっている可能性に気づく. 今時じゃないよ,と言い返したいが,…

生命機械が未来を変える: 次に来るテクノロジー革命「コンバージェンス2.0」の衝撃/Susan Hockfield(2022)

何となく気になって積読してあった本. 冒頭と終わりは,学長目線でイノベーションを起こすには,投資は必要的な話. 中身は5つの事例で,いずれも生物学×工学でインパクトある研究を紹介してくれる. 例えば,ウイルスからバッテリーをつくる話と,義足の話…

ALIFE|人工生命 より生命的なAIへ/岡瑞起(2022)

進化計算に触れたことがあったため,後半を流し読み. 強化学習は見ていたが,進化計算側の動向が少し見えた. カオスの淵, 多変量ホークス過程, キーストーン種, ポリアの壺モデル, 群衆の知恵と集団的知性, 新規性探索, 品質多様性, Neural MMO, E…

A Thousand Brains: A New Theory of Intelligence/Jeff Hawkins(和訳, 2022)

神経科学の検知から,知能を司る新皮質が統一的な原理で解釈できる,という野心的なアイデアを解説してくれる本. 2時間かかる電車の中で読み始めたら,分かりやすすぎて手が止まらず,気づいたら目的の駅に着いていた. 一般読者向けなのと,一つの原理を説…

言葉/アボガド6(2022)

書店の漫画コーナーで何となく気になって購入. 漫画かと思ったらイラスト集.しかし,思いのほか興味深かった. 一部,心の病気や,虐待など,見ていて陰鬱になるものが含まれているせいか,暗い気持ちになりがちで,正直,ちょっとつらい. 見た目では分か…

銀河英雄伝説(1988-2000)

最近のアニメリメイク版は見ていたので,その先の流れだけでも知りたくなり視聴. 全110話,最近のリメイクは見ていた部分を省いても残り85話程度. 3倍速で視聴したものの,3日もかかった. 終わってみれば,話自体は非常に単純. 出てくる人物名が多いだけ…

ひとはなぜ戦争をするのか/Albert Einstein, Sigmund Freud(2016)

1932年,ナチ政権誕生の手前でやり取りされた書簡. アインシュタインから,人間を戦争から解放できるか,という問いを投げかけ,フロイトが心理学の観点から答える形. 最も興味深いのは,組織や社会では到底利害関係のバランスを永続的にとることはできな…

残酷人生論/池田晶子(2010)

大学院生のとき何気なく買って,面白かったなぁ,という感想だけは残っていた本. 本棚を眺めて何気なく目が留まる. 最も不思議なのは,なぜその感想だけが残っていたのか.それは恐らく,文章が巧で,一種の爽快感と納得感が得られるから. 直感で理解でき…

永遠の831(2022)

amazon primeで見つけて視聴. 自分自身の閉塞感を言い当てられた気分になった. (ラストは腑に落ちないが.) 大きな流れは,3.11,もしくはコロナ後,831戦線=summer breakerと名乗るテロリストが政府に宣戦布告. 問題に立ち向かわず延々と夏休みの宿題…

機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ(1989-1990)/富野由悠季

劇場版は鑑賞済みの状態で,何となくラストが気になって購入. 読む前の予想では,ギギを助けたハサウェイが大気圏に突入=閃光になった,というラストを想像したが,真逆だった. ある意味,地味に,静かに,リアルに,もっともキツいラストだった. 序盤で…

旅/入江亜季(2022)

書店で同じ表紙で大きさの違う二冊があるのが不思議で何となく購入. トキの旅が最も印象的. ただ「見守る」師匠と,自分の目的のために動き続ける主人公. 最初はありきたりな師弟関係ものかと思ったが,想像以上の,師匠の見守りと,険しすぎる道を行く弟…

異文化理解力――相手と自分の真意がわかる ビジネスパーソン必須の教養/エリン・メイヤー(2015)

ビジネス面から見た,文化の違いを俯瞰させてくれる. アメリカは結構違うんだろうな…と漠然と思っていたところに,180度違う,と突き付けられて,結構焦っている. 本文中に出てきた一文が,この本を読んで一晩経った後の感覚にそっくり. 恐らくこんな内容…

ぼくは会社員という生き方に絶望はしていない。ただ、今の職場にずっと……と考えると胃に穴があきそうになる。/フミコフミオ(2019)

中年おじさんの心の内(?)が覗ける一冊. 若さと老いの中間,色々見えてきて絶望している人の目線. しかし,そんな状況に絶望しきっていない,ぬるま湯のような文章. 20代後半の自分としては,ほんの少し分かるようだけど,分かりたくない内容だった. …

ロボット工学者が考える「嫌なロボット」の作り方/松井哲也(2022)

HAIの分野で,人のモデルを作る,もしくは規範を埋め込む,という流れに対する反論. 意外性や謎めいた?「未知」の他者Xをつくるべきではないか,という指摘. そのため,目指すところは「説明可能なX」でもないという話. 道具としてのXではなく,他者とし…

交渉の心理学/佐々木美加(2012)

交渉に関する研究は,実践指南型(経験論),規範型(ゲーム理論,合理行動の解析),記述型(心理学的,内的過程)に大別されて,そのうち3つめについて概説. また,交渉の構造は,分配的交渉(zero-sum),統合的交渉(トレードオフだが,完全にzerosumで…

22世紀の民主主義 選挙はアルゴリズムになり、政治家はネコになる/成田悠輔(2022)

無意識データ民主主義,民主主義の民意の吸い上げと政策決定を自動化するという提案. 最初に要約が書いてあるので,本冒頭と後ろの章を読むと,概ね分かった「気になる」. 読み取れた範囲では,この提案が,全てを解決しているわけではないと思う. 例えば…

Towards Uniformly Superhuman Autonomy via Subdominance Minimization

Brian Ziebart, Sanjiban Choudhury, Xinyan Yan, Paul Vernaza Proceedings of the 39th International Conference on Machine Learning, PMLR 162:27654-27670, 2022. デモに様々な劣解が含まれていることを仮定. なるべく,パレート支配的な解を見つける…

テクノロジーが 予測する未来 web3、メタバース、NFTで世界はこうなる/伊藤穰一(2022)

web3.0,Metaverse,NFTの概念的な動向と具体的事例を俯瞰で示してくれる一冊.非常に分かりやすい整理だった. この本を読むと,日本語文献で見かけるweb3.0の話より,抽象度高めで俯瞰的な目線が理解できた気になる. これまで,動画サイトでweb3.0に関す…

ソロー『森の生活』を漫画で読む/ヘンリー・デイヴィッド・ソロー (2018)

静岡の丸善にて,科学系の棚に置いてあるのを見つけてふと手に取る. 大本は,1854年出版のウォールデン 森の生活 - Wikipedia. 日本は幕末. この年代に,あえて森に棲んでみよう,と思っている人が居たことにまず驚き. 加えて,内容に古臭さを感じないこ…

断腸亭にちじょう (1)/ガンプ(2022)

漫画家の闘病. オブエラートに表現されているし,全てが描かれているわけではないのだろうが…どうにも生々しい. あまり気に留めていない体調が,実は癌で,癌だからあれこれ治療する. 思ってないタイミングで病気になる点には,実体験があるからか,強い…

独立国家のつくりかた/坂口恭平(2012)

能動的になると,人は国をつくれるらしい. 綺麗なストーリーになってるようで,個々の要素が面白いので,中々まとめるのが難しい. ストーリーとしては,日本の上に「独立国家」のレイヤーを載せ,さらに「態度経済」による「交易」を目指す. 態度としては…

巨大災害のリスク・コミュニケーション/矢守克也(2013)

よくあるリスク・コミュニケーションや自助公助共助ではなく,その先に進むヒントを与えてくれる(かもしれない)一冊. 災害情報のダブル・バインド メタ・メッセージ 「お前,ほんまあほやなぁ」というメッセージに対し,何を受け取るか? 愚かだ,という…

防災ゲームで学ぶリスク・コミュニケーション―クロスロードへの招待/矢守克也,網代剛,吉川肇子(2005)

防災減災において「主体性」を持つためのゲームを提案している. ゲームでは,実際の災害時に遭遇しうるジレンマ的選択肢を突き付け,第三者の目線から,どうしたいか,他人がどう思っているかを共有する. 従来の防防災教育,つまり専門家から当事者への説…

Soul/Pixar(2020)

仕事への行き詰り感が最大値になって,実際に支障が出てた直後に,この映画の存在をyoutubeで知って,鑑賞.泣いた. 寝る間際,布団の上で鑑賞. 寝ぼけた頭で最初観た時は素直に,「夢」を追いかけても満たされず,身近で短期的な「今」に幸せを感じたほう…