moNo’s note

最近読んだ本,観た映画など,気ままにメモします.

中島らもの特選明るい悩み相談室 その3 ニッポンの未来篇/中島らも(2002)

某動画サイトで桂枝雀師匠との対談動画を見て購入.

しかし,期待を裏切って,最も面白いのはその動画の話で,本を読んでもその時ほど面白いと思わなかった. これは,少々興味深い体験だった.

勿論,話のネタが古い,嘘くさい,と感じて,共感しずらいこともある. ただそれ以上に,「対話」自体に面白さがあるようにも思う. つまり,あくまで人生相談はその人に向けてのやり取りで,対談ではその会話の中に,一番の面白さがある. そしてその面白さは,思考が少し「ずらされる」ところなのかも. もしくは,単に,中島さん自体が面白いのか.

いずれにせよ,不思議な人...

こんとあき/林明子(1989)

げっそりした帰りの電車内,某動画サイトでだれかが紹介していたのをきっかけに購入.

一読したとき,こんが親を,旅路を帰郷と解釈した. そのうえで,大丈夫と言い続けるこんの強さに,感じるものがあった. 同時に,身近な強い?大人を連想した.

一方,ネットの感想を見てみると,こんとあきの関係をそのままぬいぐるみと子供と捉えて,その冒険譚としている人も. なるほどそうも見えるのか...

私が大丈夫と他人に言える日は来るのだろうか.

橋の上で/ 湯本香樹実,酒井駒子(2022)

大人向け絵本コーナーで目について購入. 橋の欄干で俯く少年の表紙に感じるものがあったら,是非一読してほしい. 疲れていても絵本は読みやすい.

個人的には,あの1ページのように綺麗ではないけど,近しいことが直近で頭を過ったことを思い出して,全く馬鹿にできない. 人の人生に意味はないかもしれないが,ああいう支えがあって,なんだかんだ生きていくのかもしれない

おくりものはナンニモナイ/Patrick McDonnell(2005)

大人向け絵本コーナーで目について購入. 誰かに何かを贈るとき,少し立ち止まるために,思い出したい一冊. これを贈るのもよいかもしれない.

面白いのは,決して綺麗な絵ではないのに,どこか可愛らしさがありつつ,メッセージは明確に伝わってくること. しかも,そのメッセージが単純なようで,考えさせられること. こういう表現方法もあるのだなぁ...

結論を書いてしまうと面白さ半減のため,あえて中身については触れない.

なんでも見つかる夜に、こころだけが見つからない/東畑開人(2022)

書店の心理学系の棚で発見.なんとなく目に留まって購入.

世界は単純だ,人間関係が全ての悩みだ,というアドラーに対し, 全ては二項対立でその両方が内在されてる,複雑なものなんだよ,と改めて気づかされた本. セラピーの実例を織り交ぜて物語形式になっているためか,非常に読みやすい.

特に印象に残ったのは,現代は「大海原に放り出された小舟」の時代で,自己啓発は「処方船」,という表現. あっちへフラフラ,こっちへフラフラ,ときに大きな船に引っ張られて嵐に会い,小島を見つけたと思ったらめぼしい食料もなく…などと妄想が膨らむ.

※充実しているのは,無人島で1から生活基盤を組み立てる人々なのかもしれない,と「神秘の島」を思い出しながら考える.あれは資本主義の象徴だったのかな.

個人を考えるうえで,その個人の中にも複数の軸があっちへいったり,こっちへいったり. そういうものなのかも,と考えるだけで,(根本的に解決にはならないけれど)少しだけ救われる気分になる.

タテ社会の人間関係/中根千枝(1967)

組織に属する人は,一読してみては?,というポップに惹かれて購入.

「日本人はXだから…」とよく聞く話が多くげんなりするが,よくよく思い返すと,気づかないうちにそのステレオタイプにはまっている可能性に気づく. 今時じゃないよ,と言い返したいが,企業に属してみると,実際のところ本質はまったく変化していない気がしている. 比較対象が少ない環境だからこそ,あらためて気づかされた

また,この類の話は,良い悪いということでもない. 著者もおわりにこう記している.

本書に提示したような日本社会の特色というものは,決して日本人が本質的に他の社会の人々と比べて異なっているということではない.…(中略)…したがって,日本人は・・・である,という前に,一定の同一条件を与えられた場合,日本人でなくとも,どこの国の人間だってこのように反応するのではないかと,疑問をもってみる必要がある.

そして,その条件が「日本」ではなく,文化や人の歴史的な「単一性」ではないか,と主張している.(ここで副題「単一社会の理論」につながる…!)

最後に. この本では,知らなかった話や,ところどころに出てくる実例(いずれもインド多め)が結構面白い.

例えば,集団意識が場(属する組織など)か資格(学歴や職業,年齢や性別などの属性)のどちらにあるか,という話では,

日本人の集団意識は非常に場におかれており,インドでは反対に資格におかれている.…(中略)…駐豪やヨーロッパの諸社会などは,いずれも,これほど極端なものではなく,その中間(どちらかといえば,インドよりの)に位するように思われる.

嫁姑について,日本は孤軍奮闘だが,

インドの農村では,長期間の里帰りが可能であるばかりでなく,つねに兄弟が訪問してくれ,何かと支援を受けるし,嫁姑の喧嘩はまったくはなばなしく大声でやり合い,隣近所にはまる聞こえで,それを聞いて,近隣の(同一カーストの)嫁や姑が応援に来てくれる.

家族制度について,日本人は個人を縛る「家」を目の敵にするが,

インドの家族制度というものが,…(中略)…個人の思想とか考え方についてはまったく開放的であるためか…(中略)…家族制度は,インド人にとって悪徳でもなく,仇にもなっていない

また,ウチ者・よそ者と線を引きたがり,外国に行ってさえウチ者のコミュニティを作りたがるが,そうではない景色になると

大学で中国人の学者たちが3,4人で中国語で話し合っているところに,私たちが通りかかると,特にその連中に用事があるのでもないのに,彼らはたちまち英語にきりかえる

以前,youtubeで海外留学で「敢えて日本人コミュニティを避けている」とインタビューに答えていた学生さんがいた. ステレオタイプが崩れている部分もあるし,残っている部分もある. なんとも,文化や民族とは面白いものである.

生命機械が未来を変える: 次に来るテクノロジー革命「コンバージェンス2.0」の衝撃/Susan Hockfield(2022)

何となく気になって積読してあった本. 冒頭と終わりは,学長目線でイノベーションを起こすには,投資は必要的な話. 中身は5つの事例で,いずれも生物学×工学でインパクトある研究を紹介してくれる. 例えば,ウイルスからバッテリーをつくる話と,義足の話. 研究内容とそのための予備知識がメインだが,その研究に至るまでの話や現在のラボの状況についても言及されている. 次のホットワードはこの辺りか,宇宙か,はたまた環境か. 普段,自分の周辺の話だけでは想像できないが,世界が良い方向に変わるかも,と思えてくる. 自分も自分にできることを頑張ろう.