アルジャーノンに花束を (1966, Daniel Keyes)
※年代は長編原作のもの.wikiを参照.読んだのは2015年の新版(ハヤカワ文庫NV)
書店にて帯とポップが気になって購入. 1時間の新幹線移動で,大きく読み飛ばしながら,ストーリーラインだけ追った.
「人生で一度は読むべき」には疑問符だが,読む手は止まらなかった. 主人公の手記(経過報告)と言う形で,障害の状態とIQが上がった状態との対比が,言語化されている点が興味深い. 是非,翻訳前の文も読んで,対比してみたい.
自分自身も日々メモをPCに書いているが,年齢や病気によって内容が変化する可能性(つまりIQとやらが減り続ける一方?)を考えると,他人事とは思えない小説だった. また,他人の日記をまじまじ観察したことはなかったが,仕事で扱った言語モデルとも絡めると,また面白い視点があるかもしれない.
シャーロック・ホームズの凱旋/森見登美彦(2024.1)
著者の過去作を何作か読んでいたこともあり購入.
推理小説のオマージュ,京都とロンドンのブレンド,多重構造の世界観など,舞台設定が非常に練られていて面白かった. 私が著者に対して抱いているイメージは,非常に頭が良く,技巧的な小説を書く,ということ. 本作もそのイメージ通りで,それが私自身の好みであるのか,楽しめた.
印象的だったのは,オマージュの部分と(恐らく3重の)世界観. 前者は,例えば,自分探しの旅と称しグーたら過ごす名探偵. シャーロックホームズを読んだことのない私でも,このギャップは面白い. この面白さは,昨今の「現実」を描いた娯楽作品と同種のものであり,現実と理想のギャップと,それを面白おかしく描写するところから来ているようにも思う. 後者は,世界を三つ以上示唆することの面白さ. 世界が二つの場合,創造された世界から別の創造された世界へ行って帰ってくるだけで,現実との結びつきが想像しづらい. 仮に,現実と創造の二つを設定しても,現実側を創造された現実と解釈してしまう. これを三つ,つまり,二つの創造の外側を示唆すると,三つめを現実と結び付けたり,n重構造の可能性を考えたりと,妄想が広がる.
1年ぶりに日本語の小説を読んだが,楽しい時間だった.
中島らもの特選明るい悩み相談室 その3 ニッポンの未来篇/中島らも(2002)
某動画サイトで桂枝雀師匠との対談動画を見て購入.
ただ,読了後,最も面白いのはその動画の話で,本を読んでもその時ほど面白いと思わなかった.何故か?
勿論,話のネタが古い,嘘くさい,と感じて,共感しずらいこともある. ただそれ以上に,「対話」自体に面白さがあるようにも思う. つまり,あくまで人生相談はその人に向けてのやり取りで,対談ではその会話の中に,一番の面白さがある. そしてその面白さは,思考が少し「ずらされる」ところなのかも. もしくは,単に,中島さん自体が面白いのか.
いずれにせよ,不思議な人...
こんとあき/林明子(1989)
げっそりした帰りの電車内,某動画サイトでだれかが紹介していたのをきっかけに購入.
一読したとき,こんが親を,旅路を帰郷と解釈した. そのうえで,大丈夫と言い続けるこんの強さに,感じるものがあった. 同時に,身近な強い?大人を連想した.
一方,ネットの感想を見てみると,こんとあきの関係をそのままぬいぐるみと子供と捉えて,その冒険譚としている人も. なるほどそうも見えるのか...
私が大丈夫と他人に言える日は来るのだろうか.
橋の上で/ 湯本香樹実,酒井駒子(2022)
大人向け絵本コーナーで目について購入. 橋の欄干で俯く少年の表紙に感じるものがあったら,是非一読してほしい. 疲れていても絵本は読みやすい.
個人的には,あの1ページのように綺麗ではないけど,近しいことが直近で頭を過ったことを思い出して,全く馬鹿にできない. 人の人生に意味はないかもしれないが,ああいう支えがあって,なんだかんだ生きていくのかもしれない
おくりものはナンニモナイ/Patrick McDonnell(2005)
大人向け絵本コーナーで目について購入. 誰かに何かを贈るとき,少し立ち止まるために,思い出したい一冊. これを贈るのもよいかもしれない.
面白いのは,決して綺麗な絵ではないのに,どこか可愛らしさがありつつ,メッセージは明確に伝わってくること. しかも,そのメッセージが単純なようで,考えさせられること. こういう表現方法もあるのだなぁ...
結論を書いてしまうと面白さ半減のため,あえて中身については触れない.
なんでも見つかる夜に、こころだけが見つからない/東畑開人(2022)
書店の心理学系の棚で発見.なんとなく目に留まって購入.
世界は単純だ,人間関係が全ての悩みだ,というアドラーに対し, 全ては二項対立でその両方が内在されてる,複雑なものなんだよ,と改めて気づかされた本. セラピーの実例を織り交ぜて物語形式になっているためか,非常に読みやすい.
特に印象に残ったのは,現代は「大海原に放り出された小舟」の時代で,自己啓発は「処方船」,という表現. あっちへフラフラ,こっちへフラフラ,ときに大きな船に引っ張られて嵐に会い,小島を見つけたと思ったらめぼしい食料もなく…などと妄想が膨らむ.
※充実しているのは,無人島で1から生活基盤を組み立てる人々なのかもしれない,と「神秘の島」を思い出しながら考える.あれは資本主義の象徴だったのかな.
個人を考えるうえで,その個人の中にも複数の軸があっちへいったり,こっちへいったり. そういうものなのかも,と考えるだけで,(根本的に解決にはならないけれど)少しだけ救われる気分になる.