moNo’s note

最近読んだ本,観た映画など,気ままにメモします.

なんでも見つかる夜に、こころだけが見つからない/東畑開人(2022)

書店の心理学系の棚で発見.なんとなく目に留まって購入.

世界は単純だ,人間関係が全ての悩みだ,というアドラーに対し, 全ては二項対立でその両方が内在されてる,複雑なものなんだよ,と改めて気づかされた本. セラピーの実例を織り交ぜて物語形式になっているためか,非常に読みやすい.

特に印象に残ったのは,現代は「大海原に放り出された小舟」の時代で,自己啓発は「処方船」,という表現. あっちへフラフラ,こっちへフラフラ,ときに大きな船に引っ張られて嵐に会い,小島を見つけたと思ったらめぼしい食料もなく…などと妄想が膨らむ.

※充実しているのは,無人島で1から生活基盤を組み立てる人々なのかもしれない,と「神秘の島」を思い出しながら考える.あれは資本主義の象徴だったのかな.

個人を考えるうえで,その個人の中にも複数の軸があっちへいったり,こっちへいったり. そういうものなのかも,と考えるだけで,(根本的に解決にはならないけれど)少しだけ救われる気分になる.