moNo’s note

最近読んだ本,観た映画など,気ままにメモします.

時間は存在しない/Carlo Rovelli

量子重力理論の第一人者が,現代物理学と個人的考察から,一般的な「時間」を破壊し,再構築する本. 分かりやすいストーリー仕立てのため,個々が理解できなくとも,何となくの流れが追える点で非常に面白い.読ませる本だと思う.

第一章では時間の破壊が破壊される. 相対性理論によって「時間」は絶対的な時計があるわけではないし,量子論によって粒状性(量子化),不確定性,関係性(localな相互作用関係がある)が生じて,もっとよくわからないものになる,というストーリー. 絶対的な時計がある,というのはニュートンの立場であり,出来事や変化があるからこそ時間が生まれる,という立場があった,という点は目から鱗だった.

第二章では破壊後の時間に関して残ったものを整理して,第三章で時間を再構築しにかかる. 理解できた範囲では,時間・空間が先にあるか?別の物から生まれるのか?という立場があって,前者は超ひも理論,後者はroveeliのループ量子重力理論.後者に立つと,時空間は,スピンネットワーク(非常に小さなスケールで粒が並んでいる)によって形成されている,という見方になるらしい.正直,正確に理解できていない… 最低限分かるのは,私たちの生活が即時変わるものではなく,「実は地球は丸かったんだ」と同等,時間は後付けのものなんだ,という視点を手に入れることができる,ということ.

また,興味深い話としてボルツマンの話があった.エントロピー増大の話をとらえなおすと,世界の変数のうち,「宇宙」と呼んで選択された変数に視点を向けると,たまたまエントロピーが増大する特殊な系である,ということ. 要するに,「その変数が」という視点を持ち込むことで,エントロピーが低い=特殊な状態,を基底する,という指摘.確かに「秩序が」「初期配置が」というのは,ある視点が与えたもので,極論,見る人が違えばエントロピーが増大しているように見えるひとと,変わりないように見える人が居るのだろう. 研究者がとある分野に取り組んである特定の条件で新しい現象を見つけても,その分野が大きく進歩したようには見えない人々がいるように.

全体的に,SF小説っぽい読み物だが,興味深い洞察が詰まっていると思う. 細かいところが理解できると,更に面白くなるんだろうな…