moNo’s note

最近読んだ本,観た映画など,気ままにメモします.

地球外少年少女

電脳コイルと同じ磯光雄さんが監督で楽しみにしていた映画. 感想は「期待大」.頭が整理できていないが,ファーストインプレッションを書いてみる.

ストーリーは,事故に遭った衛星からの脱出劇. それと同時に,舞台設定を理解させるような構成. 設定が複雑なようで,何回も反芻せずとも内容が理解でき,スムーズに伏線を回収していくあたりが非常に追いやすい.

設定の題材は,宇宙とAI. 昨今の社会的な話題やSFが混然一体となっていて,全て列挙するのは大変...

最も印象深かったのは,宇宙関連の設定が非常に地に足ついているところ. 将来の民間宇宙開発が視覚的に具体化される衝撃が体験できる. 例えば,舞台となる商業衛星,g〇ogleがスポンサーのツアー,ユ〇クロの宇宙服,衛星内のあちこちに企業ロゴなど. ニュースに触れていれば誰でも想像できる,けど,だれも見たことはないものを,視覚的に見せられた衝撃と納得感が凄い.

一方,AIについては,「知能限界」で人類の3割を減らすべきと結論を出し,国連に破壊され,アノニマスによるテロで復活を遂げるという流れ. 2001年宇宙の旅に出てくる「人間を殺そうとするAI」,「人がAIを信じる」beatlessなど,複数のSFを混ぜたような世界観だった. 興味深かったのは,マイクロマシンで形成される人工生命的なAIと,人類という概念と人間という概念が異なる,という話. 特に後者は,人類を存続させることと,個人を尊重することは相反するという目的関数の話. この問題が解けたら,きっとノーベル平和賞だよ,と思いつつ.

その他,本筋からは逸れるが公開方法にも時代性を感じた. 劇場は数える程度だが,Netflixで複数言語の字幕・音声つきで世界同時配信. 話題になりそうな作品をいきなり世界に向けて発信し,手元のデバイスで直ぐ見れる.時代が変わったことを実感した. 加えて,映画といいつつ,そもそもTV向けだったのか6話に分割したストーリー構成だったことも気になった. もしかすると,そもそも映画向けではなく,アニメ業界がTVで儲からない→劇場で稼ぐ→配信が前提で劇場は二の次,という変化を表しているのかもしれない.


(パンフレット・設定資料集・ビジュアルアーカイブス 読了後)

非常に面白い気づきが二つ.

一つめは,リアルさを突き詰めた描写ではなく,楽しませるために嘘をついた,という話. 例えば,重力表現を突き詰めると,無重力状態だけでなく,作られた重力場では,キャラクターは平面に立てない. それを愚直に書いて視聴者に受け入れられるには早すぎて,宇宙にいる感覚が受け入れられている必要がある. 仮に,突き詰めて描写してしまうと,観客は違和感の方に気を取られる. この話は文章や論文にも通じるところがある.つまり,お作法に従ったり,読みやすい形態に落とし込まないと,他人に読んでもらいえない.

二つめは,そうはいっても細かい表現が詰め込まれている点. 面白かったのは,宇宙での汗の書き方. 重力下では下に流れるが,宇宙では皮膚の上で球状にはりつく感じになる. この点を踏まえて画面を見ると,確かに,「汗が頬を伝う」ような書き方はなさそう.

見れば見るほど発見があるのは,本当に面白い. できれば製作初期やその過程の変遷をたどってみたい.