moNo’s note

最近読んだ本,観た映画など,気ままにメモします.

機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ(1989-1990)/富野由悠季

劇場版は鑑賞済みの状態で,何となくラストが気になって購入.

読む前の予想では,ギギを助けたハサウェイが大気圏に突入=閃光になった,というラストを想像したが,真逆だった. ある意味,地味に,静かに,リアルに,もっともキツいラストだった. 序盤で,テロという手段に対し,「最終的には支持されませんよ」と言われていたのが,現実になった形. 初志貫徹は今時ではない,と言われる可能性があるが,身の丈に合わないことを無理に実行すると,こうなるしかないのだろうか…

また,読み切って気づいたのは,ギギ自身に特殊な能力があるという断定はなく,周りが勝手に解釈・誤解しただけとも読み取れた. ハサウェイが「夢だったな…夢を見ていたみたいだ…ずっと…」と思う描写が全てなのかもしれない.

初恋の人を手にかけ,鬱からテロリズム,最後は高尚な死. なぜこうも生々しく感じるのか.

現代コンテンツに脳みそを浸され過ぎている身には,古典を浚え,ということなのかもしれない. 少しづつ,読んでみよう.

旅/入江亜季(2022)

書店で同じ表紙で大きさの違う二冊があるのが不思議で何となく購入.

トキの旅が最も印象的. ただ「見守る」師匠と,自分の目的のために動き続ける主人公. 最初はありきたりな師弟関係ものかと思ったが,想像以上の,師匠の見守りと,険しすぎる道を行く弟子の描写に,読むのが止まらなかった. もしかすると,読む人によっては血筋だ,全ての痛みや苦しみは成長の過程だ,という人もいるだろうが…私はそうは感じなかった. こんな理想的な師弟が本当に存在するかは別として,ただただ痛みに耐え続ける弟子,手を出さない師匠に,どこかリアルさを感じるしかなかった.

作者等についての予備知識は全くないが,保存決定.

異文化理解力――相手と自分の真意がわかる ビジネスパーソン必須の教養/エリン・メイヤー(2015)

ビジネス面から見た,文化の違いを俯瞰させてくれる. アメリカは結構違うんだろうな…と漠然と思っていたところに,180度違う,と突き付けられて,結構焦っている.

本文中に出てきた一文が,この本を読んで一晩経った後の感覚にそっくり. 恐らくこんな内容.「国内を眺めた時は地方との差が大きなものに感じて,アメリカの傾向というものがないように思える.しかし,グローバルにビジネスをすると,その差の大きさから,アメリカの傾向が確かにあるように感じた」

事例多めだが,肝心なのは10個のグラフなので,肝心のところだけパラっとみるだけでも参考になる.

ぼくは会社員という生き方に絶望はしていない。ただ、今の職場にずっと……と考えると胃に穴があきそうになる。/フミコフミオ(2019)

中年おじさんの心の内(?)が覗ける一冊. 若さと老いの中間,色々見えてきて絶望している人の目線. しかし,そんな状況に絶望しきっていない,ぬるま湯のような文章. 20代後半の自分としては,ほんの少し分かるようだけど,分かりたくない内容だった. 世の中,こういう本もあるんだと,勉強になったということで.

ロボット工学者が考える「嫌なロボット」の作り方/松井哲也(2022)

HAIの分野で,人のモデルを作る,もしくは規範を埋め込む,という流れに対する反論. 意外性や謎めいた?「未知」の他者Xをつくるべきではないか,という指摘. そのため,目指すところは「説明可能なX」でもないという話. 道具としてのXではなく,他者としてのXを作る為には,示唆深い内容だと思う.

途中で思い出したのは,「20代で得た知見」の一文.

私たちが夢中になるのは,すべてを語ってくれない人ですから

現状のデータ駆動,モデル駆動だけでなく,学習や推論,進化など材料はそろっている気がする. 足りないとすれば,状態空間や行動空間を自己拡大することかもしれない.

交渉の心理学/佐々木美加(2012)

交渉に関する研究は,実践指南型(経験論),規範型(ゲーム理論,合理行動の解析),記述型(心理学的,内的過程)に大別されて,そのうち3つめについて概説. また,交渉の構造は,分配的交渉(zero-sum),統合的交渉(トレードオフだが,完全にzerosumではない),利害両立が可能(全体最適=個別最適がある)の三つ. その他,説得過程の話,組織,感情について個別トピックが概観できる. 特に組織については,キャリアの話,リアリティショック,リーダーなど,身に覚えのあるフレーズが並んでいる.

時間があるときに,もう一度目を通したい.

22世紀の民主主義 選挙はアルゴリズムになり、政治家はネコになる/成田悠輔(2022)

無意識データ民主主義,民主主義の民意の吸い上げと政策決定を自動化するという提案. 最初に要約が書いてあるので,本冒頭と後ろの章を読むと,概ね分かった「気になる」.

読み取れた範囲では,この提案が,全てを解決しているわけではないと思う. 例えば,若者がマイノリティである,という解決策にはなっていない. また,民主主義との闘争を棄却した理由と同様に,現政権から選択可能な選択肢との言い切れない.

しかし,そのうえで,データ駆動の国は非常に魅力的だと思うし,一度,体感してみたい. 導入可能性については,多くの人が反発することが目に見えている. 例えば,人の意見を本当に吸い出せるのか?吸い出せたとして,合意の取れるアルゴリズムが定義できるのか? また,ポピュリズムによって,さらに悪い方向になるという意見もありうる. この疑問を検証する意味でも,今の技術を組み合わせ,小さな組織でもよいので,従来の民主主義と比較実験できると面白いともう. その意味で,仮想的に試せる環境づくりを考えてみたい. 今時ならDAOが候補だろうが,それよりはセンサ技術と合意形成アルゴリズムの方が大事な気もする.